「北朝鮮問題と憲法9条の価値」
 (田村武夫茨城大学教授)

講演要旨

 北朝鮮の核実験に対して国連安保理事会の決議が採択されたが、日本は議長国であるのに、武力制裁で動いた。政府は虎視眈々と憲法の逸脱を狙っている。2000年以降、テポドン、中国の軍拡脅威論など、近隣アジア諸国への批判、不信感をあおっている。攻められるかもしれないと、排外主義的になり、軍隊を動員しようとしている。アジア諸国との100年間の歴史に学び、どう見られているかを考えようと国民に働きかけることが大事。9条改悪は60年前の悪夢の再現だとアジア諸国に映っている。日本に対抗的になるように追い込まれ、武力拡大を促す源になっている。

 拉致問題では、一方的な追求だけでなく、1910年以来35年間にわたる朝鮮の植民地化と、多数の朝鮮人の拉致、今の南北分断もそこに遠因があることを忘れてはならない。日本はそのことへの謝罪をしながらでないと拉致問題で追及できない。

 安倍首相に見られる新保守主義は、小泉前首相の新自由主義よりタカ派で教育基本法改悪の強行採決をし、憲法改悪を目指して突き進んでいる。それは、自民党の中でも都市部の会社員を支持層とする新自由主義派との分裂を生んでいる。

会場との対話

 対話の部では、「もし、日本が攻められたらどうするか」の質問に対して、今の教育で問題になっているいじめに対して、いじめられたら「なぐり返せ」と親や先生は言うだろうかと提起し、いじめに対してはみんなで団結し封じ込めることが大事と話されました。日本も武器を持って対抗するのでなく、近隣国と仲良くし団結することが侵略に対する最大の防御と感じました。

 「若い人に9条に関心を持ってもらうにはどうしたら良いか」との質問に、筑波大卒業生の内3割しか正規職員に就職できていなく、3年間の任期付など不安定雇用が圧倒的である。このように、若い人は自分の人生をどう描くか悩んでいる。憲法は25条に健康で文化的な生活の保障、13条に一人一人の尊厳、22条に職業選択の自由があるが、それらも改悪が狙われている、今の格差社会の中で、これらは若者の生活を直撃するもので、9条改悪と軌を一にするものだ。福祉国家解体、市場原理で格差拡大、軍事力で治安維持は新自由主義の発想である。こういう全体的な攻撃に反撃することと9条を結びつけて訴えていくことが大事と話されました。

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