<平和的福祉国家実現のための方法> 会場から  先生の立正大学の卒業生でございます。平和的福祉国家について、最後までお話できなかったのだとは思いますが、福祉国家と考えてみた時に、たとえば北欧の社会保障制度を連想してしまうんですよ。北欧と日本では文化の違いもありますけれども、生まれてから老後までの約束された社会保障という形で、北欧はかなり先進国であるわけですよね。日本はそこまで全く追いついていない状況なんですけれど、今でさえ年金問題・介護問題・医療問題が山積みしている中で、どうやって福祉国家の実現のためにそういった問題をクリアしていくのかという所なんですが、なにか一つ目安になるような方向性だけでもお示しいただけるとと思いますのでお願いいたします。 講師  「平和的福祉国家」は私が作った言葉で、まだ広げていないんですけども、まず何で「平和的福祉国家」としたかというと、20世紀の福祉国家はどこの国でも軍事的福祉国家なんですね。軍隊と戦争を認める福祉国家、これがイギリスも北欧も含めた20世紀の福祉国家でした。戦争と軍隊が認められた国家は、先程も言いましたように、戦争が始まればバターよりも大砲という形で、もろくも崩れてしまうわけですね。そして軍隊があれば、私達の生活をもっと良くしてくれという反対運動をやれば潰されてしまう。そういう意味において、軍隊と戦争を認めると、福祉国家がどうしても中途半端にならざるを得ないという考え方が一つ有るわけですね。それに対抗するためには、本当に福祉国家が実現するためには、戦争と軍隊を捨てないと実現できないのではないかなというのが、この言葉を作った理由なんですよ。  日本でどういうふうに平和的福祉国家を作るかというと、現在政権を握っている与党のもとでは平和的福祉国家は実現できません。平和的福祉国家を作ろうという私達が政権を握らなきゃ実現できないわけですね。そのためには、戦争に反対する個人・団体・政党が新しい政権を握るための政治活動をしなきゃいけない。それを「改憲阻止国民会議」という形で提起したわけです。  憲法の改正は、各議院の総議員の2/3以上の賛成で発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。そこで、改憲を阻止するためには、まず国会の中で改憲に反対するグループができなきゃいけない。これが昔の言葉で言う統一戦線ということになるわけです。もうひとつ、改憲には国民投票があるわけですから、仮に国会が突破された時に、国民投票で阻止しなければいけない。そうすると、議会の外で、改憲に反対する個人・団体・政党が改憲反対の統一戦線を作る。このふたつで初めて改憲阻止の国民統一戦線ができる。この統一戦線が改憲派を選挙で負かすことが出来れば、改憲に反対する国民・政党が権力を握ることができる。権力を握ることで、初めて平和的福祉国家を作る基礎ができるわけです。  現在の日本の政治・経済はどうなっているかというと、大企業、大金持ち(世界で言う大金持ちは100万ドル以上の金融財産を持っている人で、それ以外はみんな貧乏人。どこの国でも1%が大金持ちで、99%が貧乏人というのが資本主義社会の基本的な姿)中心主義ですから、改憲に反対し新しい福祉国家を作ろうとする国民が政権を握った時に、そういうものを根本的に変えることによって経済的にも福祉にお金をつぎ込むことができる。まして軍隊がないわけですから、日米安保条約も廃止するわけですから、これらに使われているお金を福祉に使うことができる。そういうことをやることによって、平和的福祉国家ができるだろうという事になるわけです。  ノルウェーも含めてみんな軍隊のあるところですから、やはり金持ちは豊かだけど、貧しい人は福祉を入れても豊かになれないと言うところが問題と考えて、それを克服するための21世紀の福祉国家は、どうしても平和的福祉国家以外にできないのではないかというのが、私の考え方です。 <憲法学者がなぜ安倍内閣打倒を言わないのか、統一戦線の原則> 会場から  先生の多面的であるけれども非常に明快なお話、心に響く形で聞いておりました。アジア・太平洋戦争=十五年戦争の総括ができていないこと、戦争犯罪者の裁きを我々の手でやれていないこと、などを非常に強く感じました。  先生のお話で、非常に新しいことを二つ学びました。一つは、安倍内閣を打倒すべきだという主張、これは他で聞いたことがありません。もう一つは、統一戦線を結成すべきであるという、これが非常に新しいことなんです。もう一つ非常に強く聞こえたのは、集団的自衛権がおかしいという論拠に、内閣法制局の見解をよく引き合いに出すのですが、それを見ると内閣法制局の見解があたかもまともであるかの如き引用の仕方になっているのですね。「内閣法制局の見解すら・・」とおっしゃっているのが、内閣法制局が訳のわからないくらい非常に難しい解釈をしてやっと答えを出している、それですらというのが私には強く響きました。  お聞きしたいことは、日本の憲法学者の方々が「安倍内閣は憲法違反の存在だから即刻退陣すべき」という問題提起をしない、従って日本の最高裁も動いていない、これはなぜかと言うのが一つです。もう一つは、改憲阻止というのが先生のおっしゃった統一戦線のスローガンかと思います。統一戦線のスローガンをどう立てるかというちゃんとした議論はされていないわけですが、改めて統一戦線を作るときのスローガン・綱領が何でなければいけないのかということをお教え下さい。 講師  憲法学者・最高裁判所がなぜ安倍内閣打倒を言わないのか、これはそれぞれの学者の心情ですから分かりませんけれども、憲法学をやっていて、憲法にのお陰で総理大臣になれた人が憲法を侮辱することは許されないから、安倍内閣のやっていることはもはや国民の意見を聞かないわけですから、そういう人は政権の座につけておくこと自身が憲法の危機だと思うんですから、私はストップではなくて辞めさせるということを言いました。それぞれの憲法学者の考え方ですから、ストップすれば良いという人もいると思いますけど。  最高裁判所については、日本の最高裁判所は具体的な事件が起きて初めて裁判をするということになるわけです。「安倍内閣のおかげでこういう被害を被って精神的に損害を受けましたよ」という形でしか裁判ができないわけで、そういう形で安倍内閣を訴えた人がないわけですから、裁判所は訴えがないのに意見を出すことはやらないわけです。国民の誰かが訴えを起こしたら、そういう事態になるかもしれない。それから、人事を通じて安倍内閣に抵抗する裁判所ではなくなった、安倍内閣が裁判所を乗っ取ったという考え方をすれば、最高裁判所にそれを望むことは無理だろう、私達がやるしかないだろうということになります。  統一戦線の問題については、共産党は一点共闘を発展させる言っているけれども、共産党が大きくならなければ一点共闘で終わるという形ですね。みんなが統一戦線を作ろうというけれども、統一戦線の原則を提起したことがないから、私は皆様に新たな統一戦線の原則を提起しております。 1. 個人・団体・政党の「参加資格の平等」 2. 自己のうちにある「独善主義の克服」 3. 自他者に対する「反共主義の克服」 4. 相手に対する「寛容主義の堅持」 5.「非暴力・平和主義の貫徹」 6. 謀略資金・外国資金の不導入」  20世紀の統一戦線は、日本でもヨーロッパでもどこでもそうですけど、特定の政党や特定の労働組合が親分になって、個人は組織に従属する存在として作られていた。21世紀は国民主権が発展して、国民一人ひとりが政治主体である。そして市民運動、NPO法人などの市民団体の運動が広がっていった時に、20世紀のような政党や労働組合を中心とする統一戦線は、多分もはや合わないだろう。したがって、個人・団体・政党の「参加資格の平等」という形で、構成員を決める必要があります。  それから、どの個人・団体・政党も、必ず独善主義を持っているんですね。独善主義がないと個性がないから。しかし、俺が正しいという考え方を貫くと、自分の意見に反対する人とは手を結べないから、自分の持っている独善主義を多少セーブする必要がある。これが二番目の「自己の内にある独善主義の克服」です。日本ではまだ民衆が政権を握ったことがない。ブルジョアジー自身も、自らの手で政権を握ったことがない国ですから・・・ 日本では残念なことに、反共主義・アカという言葉が人を非難するときに使われる。自分と敵対する人を非難するときに、必ず反共主義が出る。これを抑えないといけない。自分の心の中にある反共主義・独善主義をセーブすると何が生まれるかというと、寛容主義が生まれる。寛容主義が生まれた時、初めて自分と対立する人と話し合った上で手を結ぶことができるだろういうのが4番目ですね。  そして、日本国憲法の精神は、一切戦争をしない、戦争の道具を持たない、それ故に基本的人権が保障され、民主主義が保障され、地方自治が保障されるわけですから、非武装平和主義を貫くことが日本国憲法を守ることですから、そうすると運動する人はどんな事があっても暴力を使ってはいけない。もし民衆の中で暴力が起きたら、権力の介入を受けてその組織が崩壊しますから、どんなことがあっても暴力は使ってはいけない、これが「非暴力・平和主義の貫徹」。  そして運動にはお金がいる。お金をどこで調達するのか。CIAとかJCIAとかKCIAとかはすぐにお金をくれるんです。でもCIAやどこかの謀略家からお金を貰うと、最後は必ず殺されるんです。オサマ・ビン・ラディンはアメリカのCIAからお金をもらって、アフガニスタンを侵略したソ連と戦うために組織したわけでしょ。フセインもアメリカの支援で来たけれども、役に立たなくなったから殺されてしまった。だから謀略資金から金を貰うと最後は殺されるから、絶対に謀略資金をもらってはいけない。500円玉一つのワンコイン運動で、貧乏人の金を集めて作るのが我々の運動だから・・  この6つの原則で新たにみんなが参加するのだから、そこから選挙で指導部を選ぼう、そして私達の統一戦線を作ろうというのが、私の考えている21世紀の統一戦線の原則なんですね。  一点共闘は、戦いが終わればそれで解散なんです。それでは権力を握れないから、やっぱり権力を握るためには、一点共闘をやりながらそれを発展させた改憲阻止国民会議・反自民党政権の統一戦線を作れないと、平和的福祉国家も作れないし、私達の目的も達せられない。そしてスローガンは「日本国憲法の全面開花」です。日本国憲法はできてからすぐにですね、アメリカと自民党の改憲合意に襲われてまだツボミなんです。これが満開になったら、もっともっと素晴らしい日本ができるだろうと思っていることですから、当然そのスローガンは日米安保条約を廃棄することで、廃棄したら世界中のすべての国と不可侵平和条約を結べばいいわけです。 <統一戦線のスローガン> 会場から  一点共闘がそのまま自然発生的に統一戦線になるとは無いと思っています。とにかく統一戦線という言葉をちゃんと提起していく時期ではないかと思うんです。金子先生の統一戦線の原則は、実は統一戦線を組んでいく上での原則だと思うんですよ。  統一戦線のスローガンが「日本国憲法の全面的開花」とおっしゃったんですが。「日本国憲法の全面的開花」という事で統一戦線を組んでいくことが、どのようにやるか決して容易ではないように感じます。もうひとつ、我々が戦後の総括をやっていないという話があって、日本国憲法の成り立ち・単独講和条約・地位協定などの問題を、よっぽど良く議論してスローガンに何を立てるかという事をやって、初めて統一戦線が成り立つと思うんです。たぶん、金子先生のおっしゃった憲法全面開花と並んで、戦後の総括と日米安保条約の扱いの問題が入ってくるのではないかと思います。 講師  今後の統一戦線の理論を発展させる方向をいろいろご指示いただいて、どうもありがとうございました。 <徴兵制度について> 会場から  徴兵制度は安倍構想に入っているのでしょうか。 講師  資料の自民党改憲案を見て欲しいんです。そこの前文にこういう規定があるんです。 「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。・・・・ 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。 ・・・・」  志願制で国防軍ができて、戦争に行ってしまったら戦死者が出るわけですね。何人戦死者が出ても次々に新しい兵隊の補充ができなければ、戦争というのはできないわけですよ。だけども若者が誰も行かなくてはどうするのだ、国防軍が成り立たない。そうするとこれが利用できる。「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守」る義務があるから若者は兵隊になりなさい、という事ができる。  これに加えて、自分の国を守って戦争をしているのだから、医者が足りないからお医者さん戦地に行きなさい、兵隊さんの寝るところを作るから大工さん・左官屋さん戦場に行きなさいと言って徴用ができる。それから、兵隊さんがこれから戦場に行くのだからと言って、国民からいろんな物をかっぱらう徴発ということができる。だから、自民党は必要なときにはこれを使って徴兵制を敷くことができる。  そして、いつでも兵隊になれるように、小学校・中学校で君が代日の丸教育をやっているわけでしょ。もうひとつ忘れないでください。2012/4/1から中学の保健体育で男女とも武道が必修になったのです。剣道・柔道・相撲・薙刀なんです。剣道はどんな不利な状況に置かれても心を冷静にして確実に人を切り殺す術を学ぶもので、軍人にぴったりなんですね。今の体育の先生で効果が上がらないといえば、自衛隊員を休職にして体育の先生にして送り込むことができる、学校の中に軍人を入れることができるというシステムが今考えられている。  自民党の改憲案が実現したときには、徴兵・徴用・徴発・まで出来ると彼らは考えているということです。 <なぜこの時期に集団的自衛権なのか、アメリカの評価は?> 会場から  安倍が首相になって集団的自衛権を無理やり行使しようとしているところに来ているんですけど、自民党がずっと政権をとっていたのに、なぜこの時期に安倍首相がそういうことを言い出したのかという事ですね。アメリカの方が機が熟してきたと考えているのかもしれませんが、安倍晋三の特異な個人の問題もあるのかもしれないという気もします。その辺をどのように考えることができるのか、という事がひとつ。  それから、大東亜共栄圏の話がありまして、「中国と戦うという事でアジア諸国を解放するというのが、これからの大義名分として出てくるでしょう」という事をおっしゃいましたが、その一方でアメリカも戦後秩序を否定するという事で、これに対して失望したとされていますね。そういうことから言うと、アメリカがこの動きに対してどういう評価をし、どういう対応をしてくるとお考えでしょうか。 講師  自民党は、日本国憲法九条を改めて日本が安保条約に基づいて戦争する国にする国造りを、着々とやってきたんですね。安倍内閣はその仕上げなんです。自民党はできた時から日本国憲法を改めるという政党でしょ。これまで国民の反対を受けながらも、着実に戦争する国づくりをしてきて、いま仕上げの段階なのです。突然やったのではない。  そこからは安倍総理大臣の個人的な問題もあるでしょう、日米防衛協力のための指針を今年の秋に改正すると言っているので、その中に入れなければならない集団的自衛権を早くやるという事もありうる。来年は統一地方選挙があるので、集団的自衛権を引きずっていると負けるかも知れないという心配があるから、今年中に何とか解決しようという事がある。それから、安倍さんの病気のことがあるから、やれる時にやる。アメリカからすれば、中国との戦争準備するために早ければ早いほどよいから、できるだけ早くやれと。多分こういう要素が絡んで、安倍内閣は仕上げに走っているのではないかなと、これはあくまで推測ですよ。  アメリカの考えに関しては、アメリカは安倍内閣が集団的自衛権をやることに賛成なんですよ。ただ靖国に行くもんだから、ちょっとやりすぎと思っている。集団的自衛権を安倍内閣にやらせたいと思っていると同時に、靖国をやられるとアメリカが作ってきた戦後国際秩序が危ないものですから、変なことはやめなさいと言っている。安倍さんもあまり靖国ばかり行くとアメリカから非難を受けるわけですから、一回は行かなくては国内のファンに申し訳ないと思うから行くけれど、今後も行くかはわからない。オバマはもう終わりですから、むしろ我々は今度誰がなるかに注目すべきです。 <法人税低減の目的、内閣交代後の見通し> 会場から  2つあります。ひとつは、法人税が安くなっていますが、目的は何でしょうか。もうひとつは、今悪い方に進んでいますが、内閣が変わったら元に戻る可能性というのはあるのでしょうか。 講師  日本国内の税金が重いと、資本を大きくしたり海外活動のためのお金を使うことができないので、日本の大企業が外国の大企業に勝つためには、税金を安くしないといけない。  日本の大企業にしこたまお金を儲けさせて、外国の大企業と同じように日本の巨大企業を作るために税金を安くしないといけない。日本の大企業が外国の企業と戦って競争に勝つためにも、税金負担を軽くしないといけない。この2つで法人税をいま下げようとしている。  安倍内閣が色々悪いことをやっているんですけど、私達が統一戦線を作って新しい私達の政府をつくることが、日本が平和な国になる唯一の道だと思っているのですから。みんなで統一戦線を作って、私達の手で私達の政府をどうやって作るかという事を、本当に真剣に考える時が今来ているのではないですか。それができた時に、私達はまた平和な日本を作ることができるだろうと、そういうふうに今思っているところです。 <閣議決定されてしまった後は> 会場から  私が怖いと思っているのは、6.22には閣議決定がされてしまうという事が新聞に出てきます。いま考えていることは、公明党がなんとか阻止してくれないかなと、本当に切な気持ちで国会をみています。もし閣議決定がされてしまったら、先生は統一戦線をとおっしゃいましたけれども、そういう考えの人を集めたとしても、 閣議決定が決められてどんどん進められてしまった所に対してどうやって対抗して行けばいいんだろう、何をしたらいいんだろうという事がわからなくて、今日来てみたんですね。閣議決定がされてしまったら、私達はどういうふうに動いて行ったらいいのか教えていただけたらと思います。  公明党に期待しているというわけではなくて、阻止してくれるのであれば。閣議決定を安倍内閣の強さで押し切られてしまったら、民主主義も何もないじゃないですか。ただ憲法はあるけど何もないという私の感じている無力感を、多くの国民が感じていると思うんですね。 講師  閣議決定というのは内閣ができるんですけれども、閣議決定をしてもそれを実行するには、国会でいろんな法律を作らなくては実際には動かないわけですね。決定はもちろんショックなんだけれども、それが決定されたからといって、すぐさまどうかという訳ではないですね。国会で自衛隊をどう動かすか、集団的自衛権が起きた時にどうするかといった、いろいろな法律を作らなきゃいけないわけです。  法律を作るためには国会で審議しなくてはいけないという事があるから、閣議決定されたからこれでダメではないわけで、国会で彼らがどういう法律を作ろうとしているか見なければいけないし、その時に昨年の特定秘密法のときのようないろんな反対運動が起きるわけでしょ。反対運動が起きて、国会で法律を通すことができなくなったという状況が生まれれば、決定は決定だけれども実際は動かすことができないわけなんですよ。だから、国会で法律を作るときに、われわれの戦い方ができるということが一つあるという事を踏まえて置かなければいけない。  もう一つ、与党協議と言っているけれども、憲法96条が国会の総議員の2/3以上ということが書いてある以上、与党だけでオッケーと言ったら内閣が決定というのはおかしい訳ですよ。本当に国会の意思を尊重するのなら、与党はもちろん野党も一緒になって、国会の中に集団的自衛権をどうするかといった協議会を設けなければいけないんですよ。設けないで、与党だけで八百長やりながら(公明党は政権離脱しませんと言っているから、最初から反対しませんと意思表示しているわけですよ)協議するのはおかしいと言わなければいけないんですよ。新聞がこういうことを言わないから、我々が言っておかないといけないという事ですね。  閣議決定されたからといって、それだけでショックを起こす必要はないのであって、これから国会でいろいろ始まるわけですから、多くの国民が投書したり、署名運動やったり、議員に面会を求めたりする、あらゆる方法を使って、「国会で集団的自衛権を実働化させるための法律づくりを阻止する」という運動がこれから控えているということです。それから、選挙で自民党がなるべく勝たないような私達の運動が始まり「変なことをやると選挙で勝てないから止めようかな」という風に持って行くことが、私達の戦いになる。  国会でもう一度われわれの戦いができる。その時にあらゆる戦い方をしよう、首相官邸前で抗議をし、新聞に投書し、ラジオに投書し、座り込み・デモをやり、国会議員に面会し、あらゆる方法を使うことによって国民の怒りが本気になれば、安倍内閣を倒せるのではないか。これが私達の戦い方だろうと思っているのですね。 <中国との戦争の可能性は> 会場から  アメリカが中国との戦争も辞さないという形で準備されているということですが、それに対してどの程度の可能性があるのかお聞きしたい。むしろ中国と手を組んで、日本には経済的な形で武器を買わせたりした方が有利でないか、という動きが大半でないかと私には見えるんですけど。 講師  アメリカのことを考えるとき、大統領の動きだけで国際社会の問題を考えることはできない。どういう事かというと、アメリカ経済は軍需経済が中心なんですね。軍需産業がペンタゴンと結びついて、これまで戦争政策をやってきたんです。そこに大統領が巻き込まれるという形をとっているわけで、アメリカはアフガニスタン・イラク後10年間戦争をやっていないわけですよ。大体アメリカは10年ごとに戦争をやっている。なぜかというと、軍需産業の倉庫に武器がいっぱいになって、古い武器を使い捨てなければいけない時に戦争をやっているわけであります。だから、我々は、大統領の動きと同時にペンタゴンの動きをきちっと見て、ペンタゴンがどういうふうに戦争をやろうとしているかを、常に考えて置かなければいけないということなんですね。  中国と実際に戦争をしなくても、準備するだけで目的は達せられるわけですよ。軍事演習をやれば武器を使うことができるし、軍事演習をやれば軍事費にお金を回すことができる。今のところ、いつお起こるかということは誰も読めません。これまで色々出されたオバマ政権の文書を見ると、中国がもしどこかの国に手を出せばアメリカは黙視しませんよ、そしてもう一度アジアに軍備を再編成するという形で着々と準備しているという、そこまでしか今のところ分かりません。けれども、アメリカの軍需経済から言っても、そろそろやらないと経済が持たないという状況があるわけで、日本もこれから武器輸出が解禁されましたからそういう経済になるおそれがあるわけですね。 <脱原発の位置づけ> 会場から  統一戦線に関して、三年前に大震災があって脱原発という問題がありまして、東京都知事選でも脱原発を唱えた形があったんだけれども、結局尻つぼみの形になってしまった。今回、統一戦線の中での脱原発の位置づけがどうなるのか、それをお聞きしたい。 講師  今日は統一戦線の作り方までしかメモを作って来なかったのですが、私の考えている日本国憲法の全面開花ということは、憲法九条を本当に実現しようという事です。そうすると、日本の原発がどういった特色を持っているかというと、日本の原発は3つの機能のために作られたのですね。発電、平和利用によって悲惨な原爆のアレルギーを解消する、いつでも核兵器を作れる潜在的核保有国としての機能、の3つです。憲法九条を実現するという事は日本から核兵器をなくすることですから、原発廃止も核兵器廃絶も入れたいと、僕は思っている。 <どうしたら足を踏み出せるか> 会場から  憲法九条の会つくばの共同代表の一人です。私達が3月に憲法学者の清水先生のお話を聞きまして、そこでも「安倍内閣はもう打倒しなければならない」というお話が出たと思います。この会も多くの賛同人を擁しているそうですが、私達の会も800人以上の賛同人がおります。ただ、私が課題に感じるのは、学習会などに来ていただいても、聞いた一人ひとりがその後「憲法の語り部になろう」というふうに中々なれないことです。私達の会も、憲法改正のときの国民投票にNOと言う人になれればいいというような、それくらいの感じで発足しております。皆さん、その時になったらNOと言ってくださるとは思うのですが、率直に言ってそれではもう間に合いません。今の課題は、お一人お一人が拙い言葉であっても、九条改憲に反対だという事、自分の子供を戦場に行かせるのは嫌だ、若者を戦争にいかせるのはNOということを、自分の言葉で語り部になってくださることがとても大事だと思っているのですけど、中々そういうふうにならないのですね。集会に来たり署名に出たりしても金太郎飴状態で、そこが私達の悩みで、どうしたらあと一歩足を踏み出して、人に語るというところまで踏み出すかというところが悩みなのです。その辺のところでお話を聞かせていただければと思います。 講師  大変難しい問題で、むしろ九条の会をやっている方がお答えできるのではと思ったのですけど、ひとつは、これまでは憲法の改定は空想的危機だったんですね。どういう事かというと、これまでは改憲政党が衆議院・参議院で2/3を占めることがなかったから、危機と言っても空想的危機だったんですよ。けれども今度の総選挙と参議院選挙で、改憲派が2/3を占めてしまったという事態が起きたんですね。憲法改正が空想的危機から現実的危機になってしまったのが、現在の姿ですね。改憲が現実的危機になったという事をアピールする、リーダーの方が会員の方にきちっと伝えることが大きな課題になるのではないか。「集団的自衛権の本質は、自分の国の安全のためでなく、外国のために他所の国を侵略する権利だよ」ということを、組織として伝えることができれた時に、新しい情勢が動くのではないかなと思っているのですね。  個人の方が九条の語り部となっていただくためには、九条の会がある所では九条の会の基本的な方向を示すことが一番大切で、それを見て「あっ、そうだ。語り部になろう」というように動くのではないかと考えています。現実的危機、集団的自衛権の恐ろしさを、曖昧な形で自分のものにしていれば「まだいいか」という事で動き出さないわけですから。九条の会がそういう事を会の方針として伝え始めた時に、初めて一般の方が動くのではないかなと思っているんです。 会場から  学習会や会報で今の状況が危機であるという事は言っていまして、ところが状況はあまり変わらないという現実なんですね。このままでは危険だと、中心の人たちは焦っているのですが、なかなか状況は変化しないのです。 講師  運動は量から質に変化するという有名な言葉があるんですけど、まだ現実的危機が始まったのが最近ですから、もうちょっと時間をかける必要もあるのではないか。本当に自分の心に現実的危機が届いた時に、人間は動きはじめるわけで、多くの人が自覚して動くまでの間ちょっと辛抱しながら、「危ないぞ、危ないぞ」という事を組織のリーダーの方が言っておくのが方法ではないかなと思っています。そして、何かで火がついた時に、一気に動き始めるのではないかなと考えています。感覚の鋭い人と違って、一般の人はゆっくり時間をかけて理解してやっと動くので、動くまで待つ時間が必要で、今はその期間ではないのかな。 <原発の危険性> 会場から  原発について、今まで稼働した廃棄物が相当量あるわけです、福島でも汚染水とかすごい量なんです。中国でも今後相当の原発を増やすと言いますが、中国が海岸淵に原発をやりますと福島のような事故を起こすことは目に見えているんですね。そうなってしまうと、将来地球はもう住めないのではないかなという不安があるんですけどもね、この点を教えてもらいたいと思うのですが。 講師  つくばの自然科学の方にお答えいただいたほうが正確だと思うのですが、いま日本は原子力発電が止まっても大丈夫ですよね。安倍内閣は嘘を言ってまでも海外で原発を売り込もうとしている事になるわけですが、世界中の原発が事故を起こして地球上が汚れてしまうことは起こりうるわけで、原発をこれ以上増やしてはいけないという考え方を日本から世界に発信しなくてはいけない。それなのに、日本の原発は安全である、事故を起こしても安全だからと世界に輸出するという、逆のことをやっているのが安倍内閣の犯罪性だと思うのですけどね。  原発反対運動をやっていらっしゃる色んな方がいらっしゃるんですけど、「21世紀に原発は危険だからいらないよ」というイメージを日本から発していくことがいま必要かなと、社会科学分野の人間としてそういうことを考えているところです。それに替わるエネルギはどうするのだという反対運動が必ず出ますから、それに関する資料はいま持っていないんですが、地球を汚染し破壊するおそれのある原発はもう止めようではないかということをきちっと言っておくことが、私達の平和運動の課題ではないかと考えているところです。