<資料について>  ただいま紹介いただきました立正大学名誉教授の金子でございます。つい先日までいた研究室を明け渡して浪人になったわけでして、ちょうど赤穂浪士の明け渡しの無念さを思って、これからは吉良上野介ではなくて「安倍」上野介を討つぞということで、月一回の安倍内閣を倒すための研究会をやっているという事が現状でございます。今日は、「暴走する安倍内閣の狙いは何か?--第九条の国を安保の国に改める」というテーマでお話をさせて頂きます。  今日は皆様のお手元に厚いレジメと資料を用意させていただきました。なんでこういった厚い資料を作ったのかというと、今日のサブタイトルに「憲法の語り部になろう」というのを付けておきましたけれど、安倍内閣は憲法の論理を無視して政治の論理で憲法を壊そうとしているわけですね。これと戦うためには、国民一人ひとりが「憲法の語り部」になって、日本中に日本国憲法の素晴らしさと安倍内閣のやることの醜さを伝える仕事をする人が溢れないと、安倍内閣に勝てないだろうと思っているわけです。憲法の語り部になっていただくためにはいろいろな資料をお届けしたほうが良いだろうという事で資料を用意しました。  まだ語り部になるのはいいだろうと思っていると遅くなるものですから、今こそ語り部として出発していただく時では無いのかなと思っています。金銀財宝はしまっておかなければいけないんですけれども、憲法の宝物はしまっておいたのでは役に立たないわけですね。自分で獲得した憲法の宝物は、少しでも多くの人に話すことで光り輝くわけですから、今日ここで勉強して獲得したものがありまして、それが宝物になりましたら、できるだけ素早く多くの方に宝物を伝えていただきたいと考えております。 資料は、 1.日本国憲法のすべての条文 2.現在の日米安保条約の姿を表す文書  (1)「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」  (2)「日米安全保障共同宣言21世紀に向けての同盟」  (3)「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」  (4)「日米両国首脳の合意文書 新世紀の日米同盟」 3.アメリカが中国との戦争を準備しているという事を書いた朝日新聞の記事  アメリカでは当たり前のことですけれども、アメリカが台頭する中国に対して戦争準備を始めたというのがアメリカの動きでして、それを受けて、自衛隊がアメリカとやる軍事演習も中国と戦争をやることを前提にしているわけです。日本では、中国とアメリカが戦争をすることはないと言っているけれども、それは間違いだというのがこの人(Hugh White氏)の考え方。こういうふうに言っている「(一部引用)米中間は一種のパラドックスを抱えている。経済では相互依存が深まって互いに欠かせない存在になっているし、日々の外交関係もうまく行っている。ところが、底流には非常に深い断裂を抱えている。両国関係とお互いの地位、役割に関する相容れない見方だ。特に2009年以降、その食い違いが双方から明確に示され、二国間関係全般に影響を与えるようになっている。例えば、東シナ海では現在、日本と中国の間で領土紛争が起きている。これは米中間の紛争にそのままつながるリスクがある。両国間の争いは、今後もエスカレートし続けるようにみえる。そうなれば戦争の危険性も高まる。我々は極めて深刻な下り坂をたどりつつあると言える。」 4.国家安全保障戦略の要旨 5.新「教育長」で責任の明確化 渡海紀三朗委員長に聞く(自由民主)  戦争を始めると軍事教育をやらないといけないわけで、教育勅語をもう一回復活させるというのが安倍内閣の狙いですから、そこの妨げになる教育委員会を政治の論理で屈服させるという、教育委員会の改革案。 6.安倍首相記者会見 集団的自衛権「基本的方向性」  集団的自衛権を使えるとする、基本的方向性。これをめぐって公明党との話し合いが続いている。 7.自由民主党 日本国憲法改正草案  憲法九条は邪魔で、廃止しなければいけない。そこで、憲法を真っ向から改めるという自民党の改憲案。 これが、安倍内閣がやっていることの元になる文書で、これがあれば、皆さん語り部となってですね、至るところでご活躍いただけるのでは無いのかなと言う風に考えているところであります。 <はじめに>  安部内閣総理大臣の執念はですね、あらゆる手段を用いて、合法・非合法・どんな手を使ってもいいから、日本国憲法を蹂躙し、日本を戦争しない「九条の国」から、侵略戦争までする「安保の国」に改める事にある。そのために安倍内閣は国民を戦争に引きずりこむために「積極的平和主義」を唱えていて、至るところで「積極的平和主義のために」という事を言っている訳ですね。  じゃあ安倍内閣はなんで今、安保条約に基づいて侵略戦争する安保の国を作ろうとしているのか。その鍵は「積極的平和主義」ということにあるわけですが、まず安倍内閣の積極的平和主義を探ることによって、安倍内閣の狙いを明らかにしておこうと、そして私たちの課題を考えようではないか、今日の私の大まかなストーリでございます。 <安倍内閣総理大臣の言う「積極的平和主義」>  初めに、安倍総理大臣の言う積極的平和主義とは何かを、皆様と一緒に検討していきます。安倍総理大臣がどういうふうに積極的平和主義を使っているかを最初に見ていきます。  安倍総理大臣が外部に向かって、国内でも国外でもそうですが、積極的平和主義を言い始めたのは、2013.9.15のニューヨークのハドソン研究所での講演でこういうことを言います「私は私の愛する国を積極的平和主義の国にしようと決意しています」。ここでは「積極的平和主義」がどういうことをするかを語っていません。翌日の国連総会での一般演説でも積極的平和主義と言いますね。そして、2013.10.15の所信表明演説でも積極的平和主義を言っているけれども、内容は語ってないわけです。  積極的平和主義を具体的に語ったのは、2014年の施政方針演説で、ここを読むと安倍さんの積極的平和主義の内容がわかるだろうという事で、そこを読んでみます。わざわざ柱を立てて積極的平和主義を打ち出しているわけで、 「 海を挟んだ隣国フィリピンの台風被害でも、千二百人規模の自衛隊員が緊急支援を行いました。  避難する方々を乗せたC―130輸送機は、マニラ到着とともに、乗客の大きな拍手に包まれました。「サンキュー、サンキュー」子供たちは何度もそう言いながら、隊員たちに握手を求めてきたそうです。  日本の自衛隊を、日本だけでなく、世界が頼りにしています。世界のコンテナの二割が通過するアデン湾でも、海賊対処行動にあたる自衛隊、海上保安庁は、世界から高い評価を受けています。  今年はODA六十周年。日本は、戦後間もない頃から、世界に支援の手を差し伸べてきました。医療・保健分野などで生活水準の向上にも貢献してきました。女性の活躍を始め人間の安全保障への取組を先頭に立って進めています。  シリアでは化学兵器の廃棄に協力しています。イランの核問題では平和的解決に向けた独自の働きかけを行っています。  こうした活動の全てが、世界の平和と安定に貢献します。これが、積極的平和主義です。我が国初の国家安全保障戦略を貫く基本思想です。 ・・・・・・  その基軸が日米同盟であることは、言うまでもありません。 ・・・・・・」  積極的平和主義の基礎は日米安保条約ですよと言っているわけです。  そこで、ここで出た「国家安全保障戦略」ではどういうことを言っているかを見てみます。資料の国家安全保障戦略の基本理念のところを読んでみますと、 「II 国家安全保障の基本理念 1 我が国が掲げる理念 ・・・・・・  我が国は、平和国家としての歩みを引き続き堅持し、国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく。これこそが、我が国が掲げるべき国家安全保障の基本理念である。 (コメント:日本は世界を支配する列強国の一つに成るよという事を言っているわけです。) 2 我が国の国益と国家安全保障の目標 【国益】  我が国自身の主権・独立を維持し領域を保全し国民の生命・身体・財産の安全を確保し、豊かな文化と伝統を継承しつつ、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすること。  経済発展を通じて我が国と国民の更なる繁栄を実現し、我が国の平和と安全をより強固なものとすること(そのためには、自由貿易体制を強化し、安定性及び透明性が高く、見通しがつきやすい国際環境の実現が不可欠)。  自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護すること。 (コメント:この国民というのは、別にすべての国民をいうのではなく、金持ちや大企業だけが国民ですから。そういう人の利益や財産を守るためだと言っている。貧乏人は入っていません。) 【国家安全保障の目標】  我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために、必要な抑止力を強化し、我が国に直接脅威が及ぶことを防止するとともに、万が一脅威が及ぶ場合には、これを排除し、かつ被害を最小化すること。 (コメント:我が国を襲う国があったら、その国を徹底的に破壊するということです。)  日米同盟の強化、域内外のパートナーとの信頼・協力関係の強化、実際的な安全保障協力の推進により、アジア太平洋地域の安全保障環境を改善し、我が国に対する直接的な脅威の発生を予防し、削減すること。  不断の外交努力や更なる人的貢献により、普遍的価値やルールに基づく国際秩序の強化や紛争の解決に主導的な役割を果たし、グローバルな安全保障環境を改善し、平和で安定し、繁栄する国際社会を構築すること。 (コメント:国際紛争には、軍事力を持って鎮圧しますよ。) ・・・・・・ 」  日本の国家安全保障政策、これが実は安倍さんのいう積極的平和主義の内容になっているわけですね。 <「積極的平和主義」の内容>  安倍内閣の積極的平和主義は、実は憲法九条を否定するところから生まれた観点なんですね。自民党が憲法九条をどのように取り扱っているかというと、1991.1.17に、今はアメリカに殺されてしまったフセインがクウェートを侵略した時に、アメリカが多国籍軍を組織して中東湾岸戦争を起こしたわけです。その時アメリカは日本に軍隊を出せと言ったんだけど、国民の反対で出せなかったわけです。そこで、当時自民党の総務会長だった西岡武夫は「憲法九条は時代遅れの、空想的な一国平和主義だ」と言って九条を非難した。けれども国民の反対で軍隊を出せなかったから、日本は最初110億ドル+20億ドルの130億ドルをアメリカに提供したわけですね。その時に彼らは九条は一国平和主義であると同時に消極的平和主義だといったわけです。これではダメなんだという、九条を否定した立場が積極的平和主義の立場なんですね。  安倍内閣総理大臣の発言から「積極的平和主義」の内容はこういう事です。  先ず、日本に対する脅威は軍事力で克服する。そして紛争のあるところ、どこでも軍事力を以って積極的に介入し、暴力的に解決するという立場が安倍さんのいう積極的平和主義で、したがって積極的に軍事活動をやる「積極的戦争主義」なんですね。この積極的戦争主義は集団的自衛権にぴったんこなんですよ。なぜならば、集団的自衛権は、自分の国には全然関係ないけれども同盟国が襲われたら、同盟国と一緒になって同盟国を襲った国をやっつけること。自分の国が襲われていないのに他国をやっつけるのは侵略ですから、集団的自衛権は侵略する権利なんです。  残念なことに、日本の新聞は集団的自衛権を侵略する権利といって紹介していないから、「自衛権」がついているから日本の国を守るんだという、安倍さんが子供を守るといったあれで皆んな騙されちゃっているんですよ。自分の国が襲われていないのに、気に入らないところは何処でもぶん殴りに行くと、これが安倍さんのいう積極的平和主義だということです。だから、安倍さんのいう積極的平和主義は、本当の平和とは無関係に、積極的戦争主義になる。そして、その積極的平和主義の基礎は日米安保条約だといっているわけです。  それでは日米安保条約というのはどういうことを定めているのか、という事を見ると「積極的平和主義」の内容が一段とはっきりするわけですね。そこで、現在の安保条約がどうなっているかという事を見ていきます。 <日米安保条約の本質> 1960年日米安保条約  この条文は現在まで一文字も変更しておりません。なぜ安保条約の条文を変えていないかというと、安保条約の条文に触れると国民の反対運動が起きる。じゃあ安保条約を改めるときはどうするかというと、大統領と総理大臣の話し合いで決めるという風にして安保条約を変えてきているんですね。  元になる60年安保条約の肝心なところを見ていきますと、安保条約は経済同盟と軍事同盟の2つの性格を持っているわけですね。その経済同盟のところは第2条に書いてある。そこを読みますと、 「第二条 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」  前半はNATOの条文と同じ条文です。アメリカは、アジアは日米安保条約で戦争する、大西洋・ヨーロッパはNATOで戦争するという2つの戦略を持っている。前半は単なる枕詞で、肝心なのは後半です。どういうことを言っているかというと、「日本とアメリカで経済的な対立が起きたら、日本の犠牲においてアメリカの言うことを聞くことが両国の間の経済的協力の促進ですよ」という事になっている。  そこで、これまでどういう事が行われたかというと、まず1959年代に小麦の輸入自由化をアメリカが要求して、日本の農家は小麦を作らなくなった。それから、オレンジの輸入自由化・牛肉の輸入自由化で日本の農業は大打撃を受けた。アメリカの牛肉自由化をやったおかげで、あの吉野家の牛丼ができたんです。吉野家はアメリカの安い牛肉を買ってできた。そしてみかん農家が大打撃を受け、酪農家が大打撃を受ける。それから米の輸入自由化をやりまして、農家は米を作れなくなってしまった。現在なら補助金が出るけれども、補助金をやらないとダメになる。こういうふうにして、小麦・グレープフルーツ・牛肉・米の輸入自由化をやることによって、日本の農業はだんだんと追い込まれていった。  それから、いろんな地域のシャッター商店街も日米安保条約から生じたので、どういう事かというと、アメリカのトイザラスというおもちゃスーパーが土浦に大型スーパーを作りたいといった時に、日本ではその当時は地元商店街の許可がないと大型店舗を郊外に作れなかったのを、アメリカが怒って「安保条約があるのになんで作れないんだ」といって、地元商店街の許可がなくても作れるようにした。それをきっかけに、いたる所で日本のスーパーも郊外に作るようになって、地元の商店街が寂れてシャッター商店街になった。  郵政民営化も、郵便局の持っている保険をアメリカのアフラックが欲しいと言っているので、ああいいですよと言って民営化になった。今問題になっているホワイトカラーエグゼンプション、大学を卒業した人には残業代を払わないという事は、アメリカが要求しているんです。アメリカではホワイトカラーエグゼンプションがあるから残業代を払わないのに、なんで日本で払わないといけないんだ、早く撤廃しろと言われている。派遣労働も、元々アメリカは派遣労働をやっているのに、日本で派遣労働を使えないのはおかしいと言われたから、はい分かりましたとなった。これが「経済的協力を促進する」ですね。  日本のブルジョアジーは、自らの経済政策を持ってないんです。安保条約に基づいて、アメリカの経済方針に従って経済活動をしていく。これが、安保条約の柱である経済同盟の本質になります。そしていま、アメリカはTPPをやってアジアの経済を支配しようとしているから、日本も早く入れといわれて、何とかアメリカの希望に沿うようにするという、こういう事が行われている。これが安保条約の本質です。  次に軍事条約は第三条で「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」とあります。ここに「憲法上の規定」と書いてあるんですけれども、これは憲法九条を持っている日本国憲法のことを言っているのではなく、日米安保条約を結ぶときに岸信介と当時のアメリカ首脳が「安保条約が成立したら必ず憲法九条は潰します」として、憲法九条を潰した後の憲法のことを書いたんです。けれども、国民の怒りで岸内閣が倒されて改憲できなかったから、九条が残ってしまって、これがアメリカにとって喉に刺さった骨なんですね。何としてもこれを抜きたい、だから早く改憲せよと自民党に迫っている。これはどういう事かというと、「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を・・・維持し発展させる」と書いてあるから、毎年毎年軍事予算を増やさないといけないという事なんです。軍拡の義務付けなんですね。日本ではこれを尊重して、軍事予算はどんなことがあっても減らさない。  次に第五条で、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と書いてあるわけですね。ここにある「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」がどういう事かというと、日本の国土がどこかの国から襲われたら、アメリカは自分が襲われたと思って日本と一緒に戦争をしますよ、それから日本にある米軍基地が襲われたら、日本は自分の国が襲われたと思ってアメリカと一緒になって戦争をしますよという事です。ここに集団的自衛権がもう入っているという事になります。  こういう風にして、日本が襲われたら、米軍基地が襲われたら、日本とアメリカが一緒になって戦争をしますよ。戦争をやったら国連安全保障理事会に届出ますよ。国連安全保障理事会が日本を攻撃した国に制裁を加えるからやめなさい、という事が書いてある。  これまで、この第五条によって戦争が行われたことはない。まず日本に憲法九条が有ったから自衛隊が海外に出て行けないという事と、日本とアメリカを襲う国がなかったからだと、それだけのこと。それから、日本には徴兵制がないわけですから、兵隊が何人死んでも新しい兵隊が次々と補充できなければ、戦争はできないんですよ。日本は若者が喜んで兵隊に行くという事はこれ迄はないから、だから戦争ができなかった。  だから、いま小学・中学・高校で、入学式・卒業式に一所懸命日の丸君が代教育をやっているわけでしょ。愛国心をいっぱい植えて、ようやくその成果が今出ているんです。10年間日の丸君が代教育をやった成果がでて、東京都知事選で田母神が20代30代の支持で60万取ったという事が行われている。「日本が襲われたらやっつけて当たり前だ、中国が文句言うんだったらやっつけてもいい」と言う考え方が、ネットを通じてものすごく広がっている。けれども、集団的自衛権がないから、第五条が発動できないわけです。これを発動しようとしているのが、集団的自衛権を使う本当の目的です。  第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と書いてあるわけですね。極東で戦争するために、アメリカは日本のどこにでも軍事基地を置くことができ、そして政府はアメリカが「ここに軍事基地を作りたい」と言ったらどこでも作らなければいけないんだけれども、国民がアメリカの軍事基地を作らせなかった所がひとつある。これは三宅島で、三宅島は空母から夜発着訓練する基地が欲しいといったけれども、住民の反対で作れなかったわけですね。国民の反対で軍事基地が作れなかった例はあるけれども、政府はいつでもハイハイと言って軍事基地を作って来ました。  そして第十条で、この日米安保条約を改めるにはどうしたら良いかというと、1970年以降は、アメリカと日本のどちらかが止めようといえば、止めようといった日から一年後に安保条約が終了すると書いてある。 <総理大臣と大統領の話し合いによる日米安保条約変更> <日米安全保障共同宣言>  1960年日米安保条約の条文は一文字も変わっていないけれども、日米安保条約を変えるためには総理大臣と大統領が話し合うわけで、その最初が「日米安全保障共同宣言 -21世紀に向けての同盟- 」で、1996年4月17日に橋本総理大臣とクリントン大統領が話し合って共同宣言を発表して、これで安保条約を変えていくわけですね。  どういうふうに変えたかというと、1960年の安保条約は「極東における国際の平和及び安全」と言ったけれど、極東だけでは狭いから、アジア太平洋地域に安保条約の適用範囲を拡大すると書いてある。これが日米安全保障共同宣言の一番大きな改定ですね。  60年安保条約の極東は何処だというと、千島列島を含む日本列島と大韓民国・台湾・フィリッピンが極東なんです。それを、中東の石油をかっぱらいに行くために、アジア太平洋地域に拡張するといった。地球の半分で戦争する安保条約になってしまったという、これが日米安全保障共同宣言による改定なんです。だからアメリカはアフガニスタン・イラク戦争をやって、自衛隊を戦争に導入するわけでしょ。九条があるからアフガニスタン国内では人殺しはできないけれど、アフガニスタンで人殺しをやっているアメリカ・イギリス・・・に油をただで提供している。こうやって極東以外の所で軍事活動をやって、イラク戦争では自衛隊をサモアに派遣したわけです。  それから、60年の安保条約は、日本とアメリカが襲われたら戦争すると書いてあったけれども、それに新しい戦争法を付け加えたんです。アジア太平洋地域で何らかの紛争が起きて、アメリカがこの紛争が日本の安全に影響を与えると言えば(周辺事態という)、日本とアメリカが襲われていなくてもその紛争を鎮圧に行く、こういう事ができるようにしたのが日米安全保障共同宣言なんです。 <日米防衛協力のための指針(ガイドライン)>  そして、戦争の方法は新しいガイドラインでつくる。これが「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」ですね。1997.9.23作成のガイドラインには、2つの戦争のやり方が書いてあります。  まず、日本とアメリカに武力攻撃があった場合の戦争の方法は、これはみんなアメリカが判断するんです。アメリカの判断で、日本と在日米軍への武力攻撃が生じたとされた場合、日本国内とその周辺海域で、アメリカ主導でアメリカ軍と自衛隊が共同で戦闘を行う。そして、アメリカ軍と自衛隊は相互に後方支援を行う。鉄砲を撃っている前線のところに食い物・薬・情報などを運ぶのが後方支援で、これがないと戦争ができないわけです。日本国政府は、後方支援は軍事活動ではないと言って、憲法九条から除外しているんですけど、これ自身が立派な戦争行為なんですね。  もうひとつ、日本とアメリカは襲われていないけど、日本に軍事的危機をもたらす紛争・周辺事態が生じた場合の戦争をどうするかというと、周辺事態かどうかも日本が決めることはなくてアメリカが決めるんです。紛争が日本の安全に影響を与えるとアメリカが判断したら、周辺事態が有るという事になる。そして、アメリカが主導して、日本とアメリカは周辺事態を鎮圧するために戦争を行う。その場合、日本は憲法九条があって海外で鉄砲を撃てないから、アメリカが鉄砲を撃って日本は日本列島全体をアメリカの基地にして後方支援をやるというのが、日本とアメリカの戦争のやり方なんです。 <新世紀の日米同盟>  もう一回、総理大臣と大統領が話しあって安保条約を変えます。それが2006年6月29日にブッシュ大統領と小泉総理大臣の合意文書「新世紀の日米同盟」という文書です。これは21世紀の安保条約がどうなるかを決めた文書なんです。「・・・21世紀の地球的規模での協力のための新しい日米同盟を宣言した」とあるように、21世紀の安保条約はアジア・太平洋地域を超えて地球的規模だというわけです。地球上でどんな紛争にもアメリカと日本は戦争に行く、これが現在の安保条約です。そして、いま世界でアメリカと日本を襲う国はありませんから、アメリカと日本が戦争に行くのはみんな侵略戦争なんです。世界中ですべての国と侵略戦争をやる、そういう安保条約になった。いま世界にある軍事条約のうちで世界中で侵略戦争をやる条約は日米安保条約だけですから、世界一凶暴な軍事条約が日米安保条約なんですよ。  だから、地球的規模で侵略戦争をやるというのが、安倍内閣の言う積極的平和主義の本質というわけです。 <さらなる日米安保条約の改変>  いま、これをもう一回改めようとしている。今年の暮に改めると言っているから、それまでにどうしても集団的自衛権を使えるようにしたいというのが、安倍内閣のもうひとつの狙いで、来年の統一地方選挙で負けたくないけど、今年中は何をやってもいいからやれることは全てやるというのが安倍内閣のやり方ですけどね。  したがって、60年の安保条約は条文は一つも変わっていませんけど、日米安全保障共同宣言、ガイドライン、新世紀の日米同盟で、日米安保条約は地球的規模で侵略戦争ができる軍事条約になってしまった、世界一凶暴な軍事条約であるわけですね。そして、日本とアメリカが戦争をするときは、日本の国力を総動員して戦争をやる。日本は日米安保条約によって経済協力しなければいけないから、自分の国の経済力をアメリカの経済のために総動員する、これが日米安保条約なんです。 <積極的平和主義の本質>  そうすると、安倍さんの言う積極的平和主義は、「平和」を使っているけど世界中どこでも侵略戦争ができるという立場です。そうすると、なぜ集団的自衛権を声高に言っているか分かるでしょ。集団的自衛権がないとアメリカと一緒に戦争ができないからなんです。だから安倍さんがテレビでやった子供を守るとか、日本を守るとかはこれっぽちも有りません。日本の安全は個別的自衛権が使えるわけで、同盟国を襲ったやつをぶん殴ってひたすら侵略をやるというのが集団的自衛権ですから。これに騙されると、集団的自衛権を使ってもいいとなるから、気をつけないといけない。  じゃあ、安倍さんの言う積極的平和主義が本当に実現したら、日本はどうなるのか。  21世紀の安保条約は「地球的規模の日米同盟」であるわけで、したがって積極的平和主義はどういう事をやるかというと、アメリカの利益を守り、アメリカの世界支配を守るために、日本とアメリカが一緒になって戦争をするのが積極的平和主義です。副次的に、日本の利益を守るために、アメリカの指示のもとで、日本が戦争をする、それが積極的平和主義。  なんで日本も戦争をしたいかというと、日本の大企業は海外にものすごい子会社を作っている。現地法人数と言って日本企業と進出した国の企業との間で合弁会社を作っている数が二万五千、100%日本の企業の金で作っている進出日本企業数が四千五百ある。約三万ある日本の企業が襲われたら、インドのスズキ自動車のようなことが行われたら、助けに行かなきゃいけないわけで、それにはどうしても積極的平和主義の名目で、日本の利益を守るためにということで戦争に行かなくてはならない。こういう事をやるのが積極的平和主義です。 <中国の台頭について>  そして、アメリカと日本が世界を支配するためには台頭する中国は邪魔だ、場合によっては中国と戦争をしてもいいよ、これが積極的平和主義の内容になるというわけですね。  レジメに、なんで日本とアメリカが中国を目の敵にするかという、経済的と政治的な根拠を書いておきました。中国の国内総生産はアメリカに次いで二番目になり、軍事費も二番目になりました。けれども、アメリカは世界の軍事費の40%を握っていて、日本の軍事費と合わせて世界の45%の軍事費を持っている軍事同盟はありません。だから日本とアメリカを襲う国はないわけで、戦争をやると言ったらみんな侵略戦争になるわけですけど、それに挑戦しているのが中国だという事で、中国を目の敵にしている。中国も今天狗になっているから、乱暴なことをやっているけれども。 <基本国策要綱と大東亜共栄圏>  そして、日本の若者にアメリカのために戦死しろと言えないから、安倍さんが何をやっているかというと、太平洋戦争をやったときの「大東亜共栄圏」の思想を、戦争をやる時の考え方にしようとしているわけです。大東亜共栄圏は、太平洋戦争を始めるときに日本政府が作った、戦争の理由なんですね。  1929年に世界大恐慌が起きて、破綻してしまった日本の経済を立て直すには、侵略戦争をやってアジアを日本の植民地にするしか無いという考え方で、日中戦争を始めた後にアジアを侵略するための戦略(基本国策要綱)を作るんですね。それが1940.7.26に第二次近衛文麿内閣が作った「基本国策要綱」で、その中に「大東亜新秩序の建設」というのを掲げます。どういう事かというと、いまアジアは白人帝国主義に支配されているから、白人帝国主義からアジアの人を解放して、日本が盟主になってアジアを幸福にしなくてはいけない、これが大東亜新秩序の建設なんですね。この大東亜新秩序の建設を受けて、松岡洋右外務大臣が「大東亜共栄圏」というのを作ったわけですね。  白人帝国主義を追い払って、アジアに一大繁栄地域を作ろうということで、これが大東亜共栄圏なんですね。アメリカ、イギリス、オランダを追っ払ったあと、日本が親分になってアジアを支配するという発想だけれども、そういうことは言わずに、白人帝国主義を追っ払ってアジアはみんな幸せになろうという。多くの知識人はこの大東亜共栄圏にコロッと騙されてしまって、太平洋戦争に賛成し、太平洋戦争が起きるとみんなホッとするんですね。これが日本の戦争のやり方でした。 <大東亜共栄圏の発想>  そうすると、日本は侵略戦争をしたのではない。もともとアジアを侵略していたアメリカ・イギリス、フランスを追っ払ったんだから、日本のアジアを解放するために戦争をしたのだから、悪いことをやっていないという事なんですね。  そして、アジア諸国の独立のために戦ったのだから、日本はアジアの恩人だよという考え方をする。でも、それではアジアの国で日本に感謝状をくれた国があるかと共産党議員が質問すると、政府は答弁で無いといったんですよ。だから、アジアの国はそういう風に思っていないのだけれども、日本はそういう事を言っている。  そして日本の軍隊は天皇の軍隊だから、天皇の軍隊が悪いことをする筈がない、南京大虐殺も嘘だ、従軍慰安婦も無いんだ、有ってもそれは売春業者が軍隊に女性を送り込んだのであって軍は関与していない、そういう考え方をしている。  したがって、良いことをした兵隊さんを、「あなたは偉かった」と言って靖国神社に参拝するのは当たり前だという、こういう考え方なんです。これが大東亜共栄圏の思想で、安倍内閣の今のやり方は、この思想をこれから戦争に行く日本の兵隊に植えつけようとしている。 <安倍政権の内閣独裁体制づくり>  安倍さんは人事を繰り返して、自分の気に入らない組織をみんな乗っ取っていくんですね。NHKも籾井勝人で乗っ取ってしまったから、NHKの受信料を払ってはいけないんですよ。安倍総理大臣は新聞社の首脳陣と事あるごとに飯を食っている。みんな安倍内閣に買収されて、安倍内閣を批判できなくなってしまったという事ですね。内閣法制局には小松一郎という人を送り込んで内閣法制局を乗っ取っちゃった。最高裁判所も、寺田という人を送り込んで乗っ取っちゃいました。こうやって、安倍内閣に逆らえない、内閣独裁体制を今作っているというのが、安倍内閣のやり方なんですね。 <積極的平和主義の行き着く先>  安倍さんが最後にどういうだろうか。これは予測ですけど、「日本の積極的平和主義は、中国と戦ってアジア諸国を解放するため」と言うだろう。けれども、日本は大東亜共栄圏の発想でこれから戦争をやるつもりでいるけれども、ドイツ・イタリア・日本の侵略戦争を防いだ連合国が国際連合を作って、第二次世界大戦後の国際社会を作っているわけですから、安倍さんのやっている靖国参拝は国際秩序を否定することになるから、アメリカもロシアも国際連合総長もEUも靖国参拝を批判するという矛盾があるわけです。 <積極的平和主義を実現するために内閣のやっている事> <国家安全保障会議>  積極的平和主義を実現するために安倍内閣が今何をやっているか。まず、日本にはこれまで戦争指導機関が無かったから、アメリカの国家安全保障会議を真似て、新たに国家安全保障会議をつくりました。日本には九条のもとで安全保障会議があったんですけど、これは戦争をやる組織ではなかったわけですね。そこで、安全保障会議を改めて国家安全保障会議をつくった。国家安全保障会議で一番大切なのは四大臣会議で、総理大臣、外務大臣、防衛大臣、官房長官の4人で一切の戦争の準備をする。2週間に1回程度この4人で話し合って、日本の戦争のあらゆることを決めるということをやっている。これが新たな戦争指導機関の発足なんですね。 <特定秘密保護法>  それから、戦争を始めれば軍事秘密が漏れるのを防がなければならないわけですから、国家安全保障会議をつくると同時に、特定秘密保護法をつくりました。特定秘密保護法がどういうものかというと、戦争するためには、軍事情報や外交情報を国民に漏らしてはいけないのですね。したがって、国家は国民に隠したい軍事・外交情報を、行政機関の長が勝手に「特定秘密」に指定し、その特定秘密を漏らした者(公務員・防衛省から仕事をもらっている民間企業の労働者、懲役10年)、盗んだ者(国民・外国人・ジャーナリスト、懲役10年)、そのことを共謀・教唆・煽動した者(懲役5年)を処罰して、国家秘密が漏れないようにする。国民には何が国家秘密かは何一つ教えないけれども、国家秘密ができてしまうと、国民は国家秘密の鎖に繋がれているわけですね。  そして、国民が国家秘密を漏らすかどうか、どうやって調べるかというと、スパイやるしかないわけです。今日本にはスパイ組織が3つあります。公安警察・自衛隊情報保全隊・公安調査庁の3つが国民を見張る。ひどい時は三者に見張られることもある。これからは家を出たら必ず一度は振り返ってみて、電柱に隠れる男・自動販売機に隠れる男・建物に逃げこむ男がいたら、それがスパイだから必ず巻かないと危ない。部屋に入ったら盗聴器が仕掛けられていないか、主催者は見なければいけない。建物を持っている人に無断でつけるのが盗聴器だから、付いているかもしれない。街頭の防犯カメラなんかもみんなアレですからね、そういうもので監視されてしまっている。  我々は何が特定秘密かわからないから、ある日突然「お前は秘密を漏らした」と言って逮捕されてしまうわけで、いつも突然逮捕される恐怖に怯えて暮らしていなければならない。とっ捕まったらもう出てこれないから、これからは家を出る時はいつも清潔な下着を着て、いつ捕まってもいいような準備をしなければいけない、そういうひどい時代がこれから来るかもわからない。  そうして、こういう制度ができると、必ず密告する人が出てくる。特定秘密保護法ができると、国民と国民がお互いに疑心暗鬼で、俺のこと密告したんじゃないかと疑わなきゃいけない。そうすると、民衆同士が敵対関係まで行く。民衆同士が敵対すると支配者が一番喜ぶわけですから、民衆同士が警戒しあって手が握れなくなってしまうという、国民を分断して支配する作戦がこの中に入っている。  そして、逮捕されても、自分がどういう罪で逮捕されたか分からないわけですよ。弁護のしようが無いわけで、逮捕されたら、普通の裁判官だったら確実に有罪になる。これが特定秘密保護法ですからね。政府が軍事情報を国民に漏らすときは戦争をする時だけだから、しかも自分の戦争は正しいという情報しか流さないから「この情報おかしいぞ」と他のところから情報を持ってくると、特定秘密を盗んだということになってしまうから、特定秘密保護法ができると戦争批判はできないということになっちゃう。政府の言うとおりに「ああそうだ、そうだ、戦争に行こう」という事になる、こういうことができるというのが特定秘密保護法で、これで国民は完全に国家の虜になってしまう。 <武器輸出三原則>  日本はこれから戦争をやらなきゃいけないから、武器をたくさん売って金儲けしなきゃいけないからと、安倍内閣は武器輸出三原則を廃止してしまいました。そして、現在戦争をやっている国以外どこでも、武器が輸出できるようにしようというようになった。日本で最大の軍需産業は三菱重工業ですから、これから三菱重工業はもっともっと金儲けできるね。日本電気・日立・東芝・川崎造船など、大儲けするわけです。  いま世界中でなんでこんなに戦争が起きているかというと、アフリカとか中東で自分の国で作れない国が最新の自動小銃で殺し合いをやっているかというと、国連の常任理事国であるアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国が世界中に武器輸出をやっているからです。もしアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国が、北朝鮮もそうですけど、武器輸出をやめたら紛争の99%は無くなりますよ。だからアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国は世界で最も醜い国なんです。日本は憧れているかもわかんないけど。これから日本の武器で人殺しが始まるわけですから、日本も世界の醜い国に仲間入りするわけですよ。  これが積極的平和主義を実現するために安倍内閣がやってきたこと。その到達点が集団的自衛権です。 <教育の国家統制>  積極的平和主義を実現するためには、国民が喜んで戦争に行かなくてはいけないわけで、いま喜んでいく人は自衛隊に入っている人ぐらいで、自衛隊に入っている人でも戦争に行かなくても良いからという人もいるわけですけど、ひとにぎりの人しか喜んで戦争に行く人がいないわけで、これじゃ困るわけだ。  そこで、教育を国家統制しなくてはいけないということで、いまものすごい教育の改悪が行われている。びっくりするような事が行われていますよ。地方教育行政法・学校教育法・国立大学法人法の改正案が国会に提出されて、こんなことが行われている。  まず、地方教育行政法の改正案で、自治体首長に教育長の任命権と教育大綱の策定権を与える。教育大綱は内閣の「教育振興基本計画」の基本的な方針を踏まえて決める。どういう事かというと、教育委員会の独立性など無い、首長が自治体の教育方針を決める、それは政府の教育方針ですから、教育委員会はそれをただ実行するだけだ。教育長も首長が決めるわけですから、長の気に入る人しか無いという事になる。これで、これまで地方自治があって、中央政府はなるべく地方の教育に関与できなかったけれども、国家統制ができるようにするという、これが国会で行われている。  大学の場合、大学には教育研究の重要事項を審議する機関として、とくに人事・カリキュラムを審議する教授会が保障されているわけですけど、これを取り上げて人事・カリキュラムの重要事項は学長が握る。教授会は何をやるかというと、学長の諮問に答える、教授会でできるのは学生の入学・卒業・終了・学位授与についての意見を述べることだけだと。そして学長が必要を認めることを諮問してきたことに答えるだけで、教授会自身は実質的には何も機能を果たさなくなる。これで大学の自治は終わりまして、もっとも国立大学法人ができた時に大学の自治は終わっているわけですね。「国立大学はお金がないだろう、民間企業に特許を売って金儲けしろ」というのが国立大学のいきかたですね、これに輪をかけて、教授会が無くなっちゃうわけですから、これで国立大学は完全に教育政策の実行機関になってしまう。  国立大学では、学長を選ぶときに、委員の半数を学外者で構成する「学長選考会議」が有るわけですね。そして、この学長選考会議に学長選考基準を定める権限を与えるというのが、国立大学法人法の改革案です。学長選考会議の基準は、文部科学省に基準に基づいて作れというわけですから、文部科学省の方針に忠実な人しか学長になれない。だからもう学長の学内選挙なんか やらなくても良いということになってしまう。  今の下村文部大臣は「教育勅語は良い、教育勅語は良い」と言っているから、いずれ将来は教育勅語の方針が日本のあらゆる小中学校を貫く教育方針となる、国家統制が行われるようになる、という事です。こうやって、教育界もものすごい危機が来ている。教育界の方は、先生方が頑張って統一を組めるからいいとして、憲法学会では、集団的自衛権を含めて、東大の先生が反対すると憲法学者は統一できないんですよ。反対声明を出したいと言っても、東大の先生が出さなくても良いと言うと出せないもんだから、憲法学者はあまり声明を出さないんですね。東大の先生たちは集団的自衛権賛成が多いもんだから、なかなか声明を出せない。 <集団的自衛権の行使を可能にしようとする画策>  そこで集団的自衛権をどうしたらいいのか。集団的自衛権は、自分の国が攻撃を受けていないのに、同盟国が襲われたら自分の国が襲われたと思って、同盟国と一緒に同盟国が襲った国をやっつけましょう、という権利であります。自分の国が攻撃を受けていないのに、どこかの国を攻撃するわけですから、侵略をする権利です。だから、集団的自衛権とは侵略をする権利だ、という事をきちっと踏まえない人は、政府に騙されてしまいますよ。  そして、日本国憲法では交戦権・戦争する権利は否定されているから、個別的自衛権でも集団的自衛権でも外国と戦争することはできないわけですから、 日本国憲法に従う限りはどんな事があったって集団的自衛権は使えません。これまで憲法九条をめちゃくちゃ壊してきた内閣法制局でも、集団的自衛権は使えないと言っているんですよ。  1981.5.29に鈴木善幸内閣が発表した、集団的自衛権についての政府の正式見解に、こういうふうに書いて有ります。「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利を有しているものとされている。我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが(注:これは当然ではなく、歪んだ解釈ですよ)、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており(注:これも九条では交戦権が無いから、自衛権も使えないのですよ)、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。・・・」。こうやって内閣法制局は、自衛権が使える、自衛隊は憲法違反でないと言っているけど、その内閣法制局でも集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないと言っている。  これまで憲法をめちゃくちゃ壊してきた内閣法制局でも、集団的自衛権は憲法九条の立場に立つ限り使えないという、これが日本国憲法の力・規範力なんです。だから安倍内閣はどんな事を言っても集団的自衛権は使えないんです、九条のもとでは。使えるようにするという事は、どんな理由をつけても九条を壊すという事・九条を抹殺するという事なんです。  そして、憲法九条を変えないで、解釈で憲法九条を死に至らしめようとしている。これが集団的自衛権を使えるようにすることでしょ。ちょうど麻生副総理がナチスの手口でと言ったわけでしょう。ヒトラーは法律を作ってワイマール憲法を骨抜きにしてしまった。それと同じ事をやるという事です。そして憲法九条を解釈で壊すということは、武力で九条を倒すと同じクーデターなんです。集団的自衛権を使えるようにすることは憲法クーデターなんですね。  安倍内閣はもう憲法を守る気がないわけですから、日本国憲法のおかげで総理大臣になっている安倍さんがもはや総理大臣にとどまることができないから、やめなきゃいけない。だから我々も安倍内閣の暴走ストップなどというのはとんでもない事で、安倍内閣やめろと言わなきゃいけないんですね。暴走をストップして生き延びさせたって、何の意味も無いわけだから。だから「安倍内閣を打倒しよう」というのがこれからのスローガンで、それを出さないと安倍内閣を救うことになるんですよ。それくらい酷いことをやろうとしているのが安倍内閣だという事です。 <積極的平和主義の到達点>  もし安倍さんが言っているような積極的平和主義が、集団的自衛権を使って実現したら、日本の国はどうなるのか。これをわれわれ学問するものは予測しないといけない。  積極的平和主義は、戦争する国家を作って、日米安保条約に基づいてアメリカとともに世界中で侵略戦争をする日本を作ることを目的にしている。そして、日本が世界中で侵略戦争をするためには、国力をその戦争に総動員しなければならない、その戦争に反対する国民や政党や団体を弾圧しなくてはならない。  日本が本当に世界中で侵略戦争をするとなったら国民が反対しますから、その反対する国民を弾圧していかなければならない。強固に反対する国民を弾圧するにはファシズムを作るしか無いんですね。侵略戦争をやるときに邪魔になる基本的人権・民主主義・地方自治・司法権の独立をみんな潰していくのがファシズムです。この日本のファシズムは、昔は軍国主義といいましたけれど、安保条約から生まれるから、「安保ファシズム」がこれから生まれる。そして、自民党は安保ファシズムを作るために、「日本国憲法改正草案」を作って基本的人権をみんな潰していくという事を言っている。 <「安保ファシズム」について>  侵略戦争をやるために、国民の基本的人権・民主主義・地方自治・司法権の独立をみんな破壊するがファシズムですけど、安保条約から生まれる「安保ファシズム」とはこういうものです。 強大な軍事・警察・官僚機構を柱とする中央行政権力専制統治機構(内閣独裁)を作る。国会は内閣の下に甘んじて、内閣を阻止する力は無い。反対派のない、安保翼賛議会をつくる。  そして、ファシズム化した大企業です。日本の大企業は、1960-70代にかけて企業内の共産党をみんな追放してしまいましたから、今は連合と手を結んで、大企業内には民主主義も基本的人権も何もないから、これはファシズム企業ですよ。700万の連合はストライキ一つ打たないで、自分の組合員が過労死で殺されても首切られても、なんの反対運動もしないわけでしょ。  そして、右翼化・反動化したマスメディア、労働組合、宗教団体、神社本庁、暴力集団といったものをもち、熱中したファシズム支持層を持ち、天皇をその精神的総括者の地位に置く、アメリカ至上主義型米日核軍事同盟体制を基礎とする対米従属の「日本型ファシズム」が、これから作られるということになる。  政治家は頼りないけど、天皇はものすごく吸収力があるでしょう。これはやはり安保ファシズムのために動いているということで、天皇は憲法を尊重しているから大丈夫だと思ったら大きな間違いで、ファシズムのための吸収力をいま作っている。 <私たちの課題>  私たちの課題はどういう事かというと、安倍さんは積極的平和主義を言いましたけれど、安倍内閣が否定した憲法九条こそが積極的平和主義ですよということですね。なぜかというと、まず憲法九条は軍隊と武器と戦争を積極的に捨てるわけでしょ。それから、紛争を話し合いで解決します、敵に対して報復をしません。そして戦争と軍隊と武器がなければ、暴力や貧困や差別をなくすることができる。  戦争と軍隊があって武器があると、貧困や暴力や差別をなくすことができないんです。なぜかというと、軍隊と戦争は貧困や暴力や差別ををなくそうとする人を弾圧するためにあるから。だから、本当にこの世から貧困や暴力や差別をなくするとしたら、戦争と軍隊を捨てなきゃダメなんです。  だから、憲法九条こそが積極的平和主義。従って、私たちは憲法九条支持に自信を持とう、そして逆に憲法九条を国内で、国際社会で広めなくてはいけない。そして、憲法九条を実現するためには何が必要かというと、安倍内閣は戦争をする国家を作ろうとしているのだけれども、私たちは戦争しない積極的平和主義を実現する平和的福祉国家を作らなければいけないという事なんですね。  平和的福祉国家とはどういうものかというと、資料を見ていただきたい。21世紀は世界中のすべての人が、日本中のすべての人が、平和のもとで幸福になる権利があるよ、動植物も地球もそうだよという事ですね。なんでここで動植物を入れたかというと、人間が食べているものは、人間が作ったものではなくて自然が作ったものですね。空気も水も人間が作ったものではないわけで、動植物が無くなったら人間は死ぬ。我々が幸福になるためには、地球と動植物も幸福にならなければいけないから、21世紀は人間と同時に動植物も幸福になろう、人間は自分の快楽や楽しみのために動植物を破壊しないようにしよう、そういうことが必要で、これが21世紀の新しい思想です。  そして21世紀は、戦争を仕掛けた国がもはや戦争に勝てない時代、アメリカのイラク戦争・アフガニスタン戦争をみてわかるように、武器もなんにもない国に勝てないわけでしょう。どういう事かというと、世界中の人が侵略は許さないよという形で行動しているからですね。それから、21世紀は国際紛争を話し合いで解決しようという時代だ。ということは、日本の憲法九条が世界の九条になって、政治・経済・文化の分野で軍事がいてはいけないという九条こそが人類の導きの星になるだろう。どういう事かというと、軍隊をなくしても、軍隊を持たない国が侵略されることはないという時代が来たという事ですよ。  国家が軍隊を戦争を持てば、自分に反乱する国民を軍隊で鎮圧できるから、基本的人権も民主主義も保障もいい加減でいいんですよ。だからいま世界中を見渡しても、まともに基本的人権だって民主主義だって保障されている国が無いわけだ。けれども、国家が軍隊と戦争をできなかったら、100万の国民が立ち上がったら、国家が倒れますよ。そうすると、軍隊と戦争のできない国が国民から倒されないためには、基本的人権と民主主義と地方自治を国民に保証する以外に生きる道がないわけだから。そうすると、初めてこの世から軍隊と戦争が無くなった時に、基本的人権と民主主義と地方自治が最高に発展できるから、平和的福祉国家ができるだろう。  そして、誰もが平和のもとで食べること・着ること・住むことができる、必要なときに必ず働くこと・休むこと・学ぶこと・医療を受けることができる、そして心と身体と職業と財産がだれからも統制されない、こういう社会が実現できる。それが平和的福祉国家で、実はこの世に天国ができるという事で、これが日本国憲法が目指している国家ですから、安倍内閣の戦争国家に対抗するには、我々にはこれしか無いだろう。  こういう平和的福祉国家を掲げて、戦争に反対する・安倍内閣に反対するすべての個人・団体・政党が改憲阻止国民会議を作れば、私たちは勝つだろう。そのためには多くの方が憲法の語り部になって、日本中に日本国憲法の素晴らしさ、安倍内閣の醜さを伝えていただければ、多分勝てるだろうと思っているところです。どうもありがとうございました。